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2012年06月28日
原木シイタケの移行率試験における試料採取方法の考察

原木シイタケの移行率試験における試料採取方法の考察

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平成24年3月12日
株式会社富士種菌 研究室
 

目的
 前回、国が指標値の根拠とした原木シイタケの移行率調査方法は、選抜したホタ木から発生したキノコ1個の抽出とそれを中心としたホタ木断面2?3cm幅を検体とし移行率を算出した。しかし、昨年度のホタ木(原木)には福島第一原発から飛散した放射性物質がより多く付着した面(表)とそうでない面(裏)があった可能性が高い。
特にホダ木上には植菌孔やキノコの収穫痕等、樹皮面に傷があるため、そこから放射性セシウムが直接ホタ木内部に浸透することが別途行った吸引試験によって確認されている。従って、ホタ木には表裏による放射性セシウムの濃淡以外にも、局所的高濃度部位、いわゆるホットスポットが形成されていたことが考えられる。
 
そうであれば、ホタ木サンプルディスク(2?3cm巾)上のどの位置からシイタケを採取したかによってシイタケの放射性セシウム濃度が異なる可能性がある。その一方でホタ木ディスクの数値は一定であるため、その結果、計算上の移行率はキノコの採取部位によって変わってしまう。つまり、不確定要素や偶然性に支配される可能性の高い試験方法は到底科学的とは言えず、それによって得られたデータは言うまでもなく信頼性を著しく欠くものである。
この仮説を確かめるために以下の実験を行い、国が行った移行率試験の精度の検証を行った。
 
供試ホタ木データ
  栽培地:茨城県霞ヶ浦市 林内(露地)栽培
  植菌:平成22年2月?
  種菌形態:駒菌
  発生回数:2?3回目
 * 平成23年3月11日、及びその後も林内(露地)で井桁積み管理。
 
測定方法
 供試ホタ木からシイタケを発生させ、予備測定としてキノコが付いた状態でホタ木中央部6点を螺旋状に表面線量計でCPM測定を行った。
 測定結果から、線量が低い側をA面、高い側をB面とした。
 汚染濃度の違いを定量する為、A・B面を中心線で2等分し、所定量のオガ屑を採取して放射性セシウムの定量測定を行った。
 次に、予備測定サンプリング部位から少し離れたところから、移行係数調査のための検体をそれぞれサンプリングした。
 シイタケは図.1に示す通り、A・B面の各々の頂点から出ているシイタケを採取し、シイタケAシイタケBとして調査試料とした。尚、シイタケB表面線量計で特に高い値を示し、B面の中でもホットスポットと考えられる部位から採取した。
 ホタ木は同じく図1に示す通り、試料シイタケA、シイタケBの採取箇所を中心に各々3cmの幅に輪切りにし、オガ屑にしたものをシイタケA採取ホタ木シイタケB採取ホタ木とした。
 尚、ホタ木試料のA,Bは約1cm幅で隣接していた。
 これら検体の放射性セシウム定量測定は外部の検査機関に委託した。
なお、この測定方法は、先に林野庁が示した移行率調査のための検査方法に準じて行った。
 
図.1

 

・A・Bの放射性セシウム濃度

ホタ木
(乾重)
Cs137
(Bq/kg)
Cs134
(Bq/kg)
合計
(Bq/kg)
A面
42.16
28.62
70.78
B面
130.61
104.92
235.52

・シイタケの放射線セシウム濃度
シイタケ
Cs137
(Bq/kg)
Cs134
(Bq/kg)
合計
(Bq/kg)
35
29
64
150
100
250
 
 
 
 
 
 
 
・ホタ木の放射線セシウム濃度
ホタ木
(乾重)
Cs137
(Bq/kg)
Cs134
(Bq/kg)
合計
(Bq/kg)
A採取部
97.4
71.4
168.9
B採取部
65.1
41.3
106.4
 
・移行率
シイタケA
ホタ木
(A採取部)
(乾重)
移行率
【シイタケ/ホタ木(乾重)】
Cs134+137
(Bq/kg)
64
168.9
0.38
 
 
 
 
 
 
 
シイタケB
ホタ木
(B採取部)
(乾重)
移行率
【シイタケ/ホタ木(乾重)】
Cs134+137
(Bq/kg)
250
106.4
2.35
 
 
 
 
 
 
 
・移行率の差
 
B/A
移行率
【シイタケ/ホタ木(乾重)】
0.38
2.35
6.20
 
  *測定機器
  表面線量測定:Jhonson  GSM500+HP-265
  放射性セシウム定量:EMF211型 ガンマ線スペクトロメータ
  放射性セシウム定量:ゲルマニウム半導体検出器 ORTEC社製 GEM-20-70

考察
 ホタ木のA・B面の放射性セシウム濃度は、3.3倍の格差が確認された。これはホタ木に放射性物質がより多く付着した面(表)とそうでない面(裏)があることを示している。
 また、A・B面の頂点から採取したシイタケAとシイタケBの間には3.9倍の格差があり、ホタ木のどの部分からシイタケを採取するかによってシイタケの値も大きく変化することがわかる。
 この結果、同一ホタ木の隣接部位にも拘わらず、採取したキノコを移行率で比較するとその差は6.1倍となった。
 つまり、国が採用した移効率試験調査方法では、殆んど同じホタ木サンプルディスクであってもキノコの採取箇所が違うだけで、計算から算定される移行率は限りなくバラついてしまう可能性があることが分かった。
 
 今回、シイタケBは表面線量計で特に高い値を示し、B面の中でもホットスポットと考えられる部位から採取した。古ホタ(2,3年生?)は原木または1年生ホタ木と比較して、木材表面の物性が低下している。その主な原因はキノコのもぎ痕や腐朽が進んだこと等によるものであるが、これによって、放射性セシウムのホットスポットがホタ木内に数多く存在していると考えられる。
 先般、国が行った移行率試験では古ホタのみを対象としていたことも、移行率算出の際に大きなバラつきを生み出す原因となったと考えられる。
 
 
 これまで弊社が行ってきた移行率調査試験方法は、複数のホタ木から採取したシイタケ(合計約800kg)と検体用オガクズ(合計約300?350g)がそれぞれ均等になるように調整し測定を行ってきた。より正確な移行率を得るためには、一回の測定に用いる検体数(ホタ木、シイタケ)を増やし、その平均化された試料で測定することが不可欠と考えている。

 

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