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2012年02月24日
原木シイタケの発生回数と放射性セシウムの移行率の相関性についてまとめました

原木シイタケの発生回数と放射性セシウムの移行率変移の相関性について

株式会社富士種菌 研究開発室
相場 幸敏、降矢 郁美、橘田美香

試験目的

これまで国が行ってきた原木シイタケの移行率分析試験は、福島県内、及びその周辺地域で放射能汚染した栽培齢2、3年生以上(H22年以前に植菌)のホタ木を中心に調査してきたと思われる。通常、2,3年生以上のホタ木(古ホタ)は、シイタケ原木が当初維持していた樹皮組織の疎水機能はホタ化に伴って著しく低下している。また、発生収穫作業に伴う樹皮部の物理的損傷(キノコの採取跡など)も増大する。
従って、原発事故直後、放射性物質のフォールアウトによってホタ木表面が汚染された今般の状況は、古ホダに限って言えば水に溶けやすい放射性Cs(セシウム)などは早い時期からホタ木内(内樹皮、樹幹部)へ浸潤しやすい条件が揃っていた。ホタ木内へ早期に浸潤した放射性Csはシイタケ菌によって吸収され、菌糸体内に蓄積が進んだ可能性が高い。
しかし、昨年3月の原発事故当時に原木の状態で被曝汚染したもの、或いは植菌後まもない1年(初年)ホタ木の場合は樹皮組織の健全性は十分維持されていたため、放射性Csの内部への浸潤は相当期間食い止められていたと考えられる。その証拠として弊社、或いは大学の研究者らのこれまでの移行率試験結果では、1年ホダ木の移行率は、2,3年生以上の栽培齢のホタ木に比べ一貫して傾向的に低い数値を示している。
今般、求められている指標値は通常栽培におけるシイタケ原木の安全な利用を目指すためのものである。従って、本来的には汚染原木から栽培を開始した1年ホタ木(H23年植菌)による移行率試験のデータは何より最優先に検討されるべきと考え、昨年秋よりこれまで様々な発生試験を行ってきた。その中で、ホタ木の腐朽度や発生回数の進捗が放射性Csの移行率にどのような変化、影響を与えうるのか、そのための追跡試験を併せて実施する事が重要と判断し、この度、ホダ木の発生回数と放射性セシウムの移行率の相関性を調査した。

試験材料(供試ホタ木)

 原木産地・福島県伊達市月舘、田村市船引、他 
・平成23年3月20日?4月初旬にかけて搬入 
・コナラ原木
   植菌       ・平成23年3月末?4月末
・シイタケ品種F506(?富士種菌)
仮伏せ ・平成23年4月?6月
本伏せ ・平成23年6月20日?現在
試験方法
上記栽培履歴のホタ木を用いて放射性セシウムのシイタケへの移行係数調査等のために昨年秋より発生試験を継続的に行なってきた。それら試験ホタ木の中から浸水発生回数が0?3回のホタ木を、それぞれに各10本(概ね同程度の太さ)を抽出し4試験区計40本を設定した。これら4試験区のホタ木は平成24年1月26日から測定のため順次浸水発生を行い、放射能測定のため所定量のシイタケ、及びホタ木(鋸屑)を試料として採集した。
試料の作成方法については、各試験区ごとに発生量が概ね均等な数本のホタ木を選び出し、そこからシイタケを等量ずつ採取して計800?900gを検体とし測定した。
ホタ木は、検体用にシイタケを採取したホタ木全部から均等に鋸屑を計320?350g採集し、それを2日間室内で天日乾燥したものを検体とした。
移行率は「シイタケの放射性Cs(Bq/kg)/ホタ木のCs値(Bq/kg乾重)」で算出した。
尚、今回の試験に使用したホタ木は何れも15?24℃のハウス内で週4回の割合で散水しながら管理した。浸水は水温(3?5℃)で16時間行った。
発生は数日の芽出し管理の後、温度12?25℃、湿度50?85%の発生舎内に展開し、収穫を行った。

試験期間
平成24年1月26日?平成24年2月23日


結果 

 
 
ホタ木
キノコ
 
試験区
(浸水回数)
浸水日
Cs137
(Bq/kg)
Cs134
(Bq/kg)
セシウム合計
(Bq/kg)
Cs137
(Bq/kg)
Cs134
(Bq/kg)
セシウム合計
(Bq/kg)
移行率
1回目
2012/2/6
683.2
941.0
1624.2
368.1
263.4
631.6
0.39
2回目
2012/2/2
202.7
168.4
371.2
105.4
80.7
186.1
0.50
3回目
2012/2/2
1311.2
1009.1
2320.2
423.6
312.8
736.4
0.32
4回目
2012/1/26
1033.7
785.9
1819.6
359.8
262.2
622.0
0.34
放射線測定機器:EMF211型 ガンマ線スペクトロメータ

考察
  今回の実験結果において、原木シイタケの発生回数に伴う放射性セシウムの移行率の目立つ変移(上昇)は特に確認されなかった。
 ところで、補足的にホタ木内の放射性セシウム濃度の変化を未使用のホダ木と1回発生ホタ木、それぞれの樹皮部と樹幹部を測定し比較した。その結果、浸水発生操作に伴う放射性Csの樹幹部への明らかな移動は確認されなかった。(別表「ホタ木の樹皮と樹幹の放射性セシウム汚染度の比較」参照)
今回の試験では弊社のシイタケ品種F506(品種登録申請中)オガ菌を植菌したホタ木を使用した。一般にオガクズ種菌はコマ菌に比べると菌回りや発生が特徴的に早い。その中でF506は植菌年内に1?3回程度発生収穫が可能な早期発生型の品種である。それに対して比較的ホタ化が遅く、発生までの栽培期間の長い完熟発生型といわれるような種菌や品種の場合、発生までの間に放射性Csの蓄積が進行し、その結果移行率が上昇する可能性が危惧された。そこで今回の発生試験において、初回発生までのホタ木育成期間が比較的長い「試験区1回目」の移行率と、昨年9月に行った育成期間の比較的短いホタ木グループによる1回目発生の移行率測定データとを比較したが有意な差は見られなかった。

別表「ホタ木の樹皮と樹幹の放射性セシウム汚染度の比較」
試料作成日:H24年2月4日  測定日:H24年2月6日

                                      株式会社富士種菌 研究開発室 降矢 郁美

 

供試ホタ木
 原木産地:福島県伊達市月舘、田村市船引、飯舘村 他
 植菌:平成23年4月
 品種:シイタケF506(?富士種菌)

試料の作成方法について
 樹皮はナタで切れ目を入れてからノミで剥がし、ミルミキサーで粉末状に加工した。
 樹幹は樹皮部を剥ぎ取った後の木(部)をオガ屑にした。
 各試料は2日間天日干しを行った後、放射線測定を行った。

測定機器:EMF211型 ガンマ線スペクトロメータ

 

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